飛翔

日々の随想です

「侘びすけ」と「じょうびたき ( 尉鶲 )」



 庭の「侘びすけ」に目白が飛んできて花の蜜を吸う。可憐な花が次々に落とされていく。目白はかならずつがいでやってくる。風もないのに白い花弁が揺れているときは、かならず幹の後ろに目白がとまって花を物色している。今日はその「侘びすけ」に珍しい客がやってきた。
 じょうびたき ( 尉鶲 )だ。じょうびたき ( 尉鶲 )は、冬によく見られる渡り鳥である。頭が白いので尉(中国の官名で後に老夫の事を言う)の名がついた 。「ひたき」とは、「火たき」「火焚き」「火叩き」のことで、おなかが野原を焼く野火のように赤いから名づけられた。
 どんよりした雲の下、白い侘びすけは、きりりと清い。
 赤い椿が散ると真っ赤なじゅうたんを敷き詰めたようにあでやかで、あやしげで、官能的でさえある。
 一方、白い侘びすけの散りぎわは、落花狼藉(らっかろうぜき)。
 水辺に浮かぶオフェーリアのようだ。土にまみれた枯葉のひつぎを純白が清めていく。
 目白と尉鶲 の「落とし文」。それが純白の「侘びすけ」。