白薔薇を歌へる
オフェリヤの白衣に似たる、
しみもなき白き花、
地に積もりたる雪のごと、
散りては、かなし。
美しき薔薇の花、
花瓶の水に散り、
恋の形見とや云はまし、
花のつや溺れ悩める。
さはれ薔薇よ、わが心のうちには生きよ!
わがために、花のひだもとの如くにふくらみ
われまたしても心行くばかり、
そが匂ひをきかんと希(ねが)ふ。
薔薇よ、清くあれ、汝(な)をわれに捧ぐる、
手のうちに見し夕(ゆふべ)のごとく、
われ汝を見、われ汝を愛でん、
汝(なれ)うつくしかりし、その日のごとく。
(ルミ・ド・グウルモン作『月下の一群』堀口大學 文藝文庫より)