飛翔

日々の随想です

君の命をあきらめない。

fukushima ←画像を見てください。
相馬、福島

愛しい君へ
さすがに、電話でのやりとりは、厳しさが募る毎日。
あたしは、朝目が覚めると同時に、夜眠りにつくその瞬間まで、君を想う。
まるで、体が千切られそうになるほど辛い。
君がここに居ないことが、痛いほど辛い。
何ヵ月も毎日毎日、顔を合わせるたびに、相馬を出る出ないで、口論していた君。
どうしてわからないのかがわからなかったあたし。
「俺の命だ、俺の自由だ」と、頑なに拒んでいた君。
それが、15才という若さの、今が何よりも一番楽しい時間で、
きっと君は外を歩くたびに、自殺している気分なんだって。
あたしが君の弟を連れて相馬を出たのは、
あたしが泣きながら君を説得する姿を見た君の弟が、夜布団の中で、
「あきらめてもいいよ」、と言ったから。
「僕、兄ちゃんのためなら、ガンになって死んでもいいよ、あきらめたよ」
9才の君の弟は、そう言ってあたしに笑った。
もう時間が無いと判断したあたし。
君の弟は、恐い話を散々聞いて逃げていたから、外に怯えてた。
ふたりのうちのどちらかを選ぶなんて、絶対にできないと、何度も何度も泣いたあたし。
何千回ため息をつき、何百回涙を流したことか。
今でもそう、君を想うと、涙が出る。
君を置いてきたこと、一生後悔する。
あたしは一生後悔する。
あたしは君の、世界でたったひとりの母だから。
君はあたしの、世界でたったひとりの君だから。
でも、あたしはそれでも、なにがなんでも君に助かってほしい。
君の命は、君が今、自分が思っているほど軽くはないのだから。
あたしにとって、家族にとって、世界でたったひとりの、君の弟にとってもね。
あたしはあきらめない。
絶対にあきらめない。
君の命をあきらめない。