飛翔

日々の随想です

ストロベリーフィールド


苺の愛らしさはたとえようがない。
幼い頃母が庭で苺を作っていた。
小さく赤い果実は子ども心にも愛しいものとして心に残ったものである。
不思議なことに雑草の中で栽培すると良く実をつける。
朝摘みの苺は瑞々しく酸味があり口の中いっぱいに爽やかさが広がる。

愛犬を車に乗せて公園へ行く途中の小高い丘はストロベリーフィールドが広がっている。
少し離れた別の丘には牧場があり、この場所から夕陽が沈むのをみるのは極上のひと時だ。

さて、毎週末の土日は近隣の農家が持ち寄った野菜の市がたつ。
私も朝早くから出かけて新鮮なとれたての野菜を買うのだけれど、この時期は朝摘みの苺がお目当て。

今摘んできたばかりという新鮮な苺を求めて遠くから人々がやってくる。
私も朝7時から並んで順番を取る。
私が買い求めるのは皆が買わないような小ぶりの苺。
これが大ぶりの苺よりも美味なのである。
 たくさん買いたいけれど、後ろに並んで待っている人たちのことも考えて4〜5箱にとどめておく。
もう少し時期がたつと私が本当に欲しい苺が出回る。
それはジャム用の苺。
これを大量に買って、ジャムにしたり、冷凍してデザートようにストックしておくのだ。
ジャム用の苺は酸味があって本来の苺のおいしさを持っていて最高においしい。
  いつも買うので苺農園のおばさんに顔を覚えられ、こっそりおまけしてもらったり、順番を待つのが遅れても、特別に取っておいてくれたりする。

市はどこへ行っても活気があって楽しい。
外国へ行っても必ずその土地の市場へ出かけていく。
珍しい野菜にお目にかかると料理の仕方を習ったりする。
昼近くになるとお弁当を持ってきている市場のおじさんが、そのお弁当のおかずを食べろよといって分けてくれたりする。
言葉は違っても、肌の色が違っても人情の機微に触れるのはそんな場所だ。

今日もキッチンには真っ赤な愛らしい苺が出番を待っている。
一粒つまんでみるとつやつやした実はしっかりとしていて口いっぱいに瑞々しい甘さが広がった。

あの丘の上のストロベリーフィールドに朝日がさすとき、小さな果実にも恵みが降り注ぐのだ。
 生きとし生けるものみなに幸いあれ。