飛翔

日々の随想です

変装して行く場所とは?


年末から肩こりに悩まされている。
 肩こりが背中の肩甲骨あたりにまで及んでいたくてたまらなくなってきた。
眼を酷使していることが原因だろう。
 どうにもたまらなくなってかかりつけの医者に行くことにした。パソコンによる眼精疲労だとのこと。頓服を出しておきますといわれた。

医薬分業で近くの薬局で薬をもらいにいくと近所の人にであった。
薬剤師がその人の薬をもってきて大きな声でこういった。
「○○さん、肩こり、いらいら、高血圧、高脂血症のお薬はこれとこれとこれ」と説明。「五千○○円です」といわれて料金を支払うその人。
会釈してその人は薬局を出て行った。
「肩こり、いらいら、高血圧に高脂血症」と人前で並べられたら聞くほうも、言われるほうもきまりが悪いものだ。

にこやかに上品な佇まいのその人が「いらいらに高脂血症」だったのかと私は心の中で「肩こり、いらいら、高血圧に高脂血症」と思わず復唱してしまったのである。
そういう自分だって「肩こり」の頓服を処方してもらった身。
家に帰ったら夫が「ついでに亭主を罵倒しない薬を処方してもらえばよかったのに」と言う。そんなことを言われたら次は「いらいらの薬を処方してもらう羽目になるわよ」と逆襲。これでは「あほの夫婦に効く薬」を飲んだほうが良さそうだ。

日本の病院にはプライバシーがないと普段から怒りを覚えている私だ。
病院には「中待合」(なかまちあい)などと、なんとも色っぽい、どこかの料亭のような名まえの待合室がある。

 中待合のソファに座っていると前にぶら下がっているカーテン越しに医者と患者の会話がつっつ抜け。
 「どうしましたか?」「足のつけにおできができましてね、それが歩くたびに痛かゆいんですよ」「みせてください」などと言ってズボンを脱ぐ音まで聞こえるのである。

 科によってはこのカーテン越しの会話は深刻で聞いてはならないものまである。聞いてはならないのでなく聞こえてしまうのである。
 こんな「中待合」などというものはないほうがよい。患者は呼ばれるまで離れた場所で待って当然なのである。

 薬局もしかり。
 薬の飲み方と注意を告げるのは個別にするべきものであって、他に聞こえないようにすべし。
 もし、私が「亭主に罵詈雑言をはかない薬」や「アホの夫婦に効く薬」を処方され、それを大勢の前で言われたら・・・。
 次回から変装して覆面をかぶって病院と薬局にいかねばならない。