不思議な日本語段駄羅―言葉を変身させる楽しさ | |
木村 功 | |
踏青社 |
「段駄羅」(だんだら)という言葉を聴いたことがある人は少ないのではないだろうか。
「段駄羅」(だんだら)は能登(石川県)の輪島で、漆塗り職人の仕事場を中心に、かつて大流行した短詩型文芸で、言葉の二重構造を楽しむ言葉遊びのことである。
二百年近い歴史がある味わい深い文芸だが、ほとんど世に知られていない。
ではどんなものか?
「段駄羅」は形の上では俳句や川柳と同じく五七五なのだが、中の七音が二つの異なる意味を持って上の五音と下の五音につながるようになっている。
では本書の例を見てみよう。
甘党は ようかんがえて 置く碁石
(羊羹が得手)
魚売り 雨囲いして 還俗す
(尼 が恋して)
見た目には オットセイだが 妻、太め
(夫、背高)
一の次 二、三、四で 夕飯よ
(兄さん呼んで!)
つばめ号 熊本行きで 冬ごもり
(熊も吐息で)
預けても 最低の利子 彼岸花
(咲いて祈りし)
など本書は「段駄羅」(だんだら)の面白さや歴史、作り方、作品例がたくさん示され、
言葉の二重構造を楽しみながら、いまやすたれてしまったこの文芸の味わいを知る喜びにいざなってくれる。
言葉は文化だといわれているが、かつては掛詞や、枕詞を駆使して言葉自体を楽しむ文化があった。今はどうだろう。サラリーマン川柳が人気があるのが幸いだ。
本書をひもときながら日本語のもつ短詩型の味わいを楽しみ、言葉遊びをしてみてはいかがだろうか。
語彙を広げ、言葉への感性を磨く絶好の書である。