飛翔

日々の随想です

狂おしいばかりの読書熱

 
 この三週間の間、一人の作家の作品を読みに読んでいる。作品だけでなく、彼にまつわるエピソードや、追悼集などを次々と読んでいる。手元にない作品は図書館で借り、古書店をあさる。日々が一人の作家で埋め尽くされている。頭の中はその作家のことで一杯になった。三週間経ってもまだ全作品を読みきれない。一冊読了するたびに書評を書く時間が惜しい。
 毎日が早く次の作品を、随筆を、追悼集を読みたくて明け暮れていく。
 食事のときも、夫に今読んでいる作品の感想を言う。夫はふんふんと聞きながら、テレビから流れてくる福島原発について語る。二人の会話がまるで食い違っているのに、互いに自分の世界に入って意にかいさない。
 私はただひたすら家の中の騒音から逃れて本が読みたい。
 来週あたりはそろそろ書評を書こうと思うが、まだ頭の中に熟成されずに反芻(はんすう)する一言半句が去来するばかりだ。
 久しぶりに、狂おしいばかりの読書熱が私にふりそそいでいる。