飛翔

日々の随想です

スーちゃんが天に召された(臨床瑣談)


キャンディーズのスーちゃんが亡くなった!
 女優の田中好子さんが21日午後7時4分、乳がんのため東京都港区三田の国際医療福祉大学三田病院で亡くなった。55歳。東京都出身。通夜は24日、告別式は25日に都内の斎場で行われる。喪主は夫の小達一雄さん。
 あまりにも若い死に衝撃を受けた。乳がんが見つかったのは三十代のときだったという。早期発見で乳房温存方法でがんを摘出。それが再発して亡くなったとは! 女優として数々の賞を取り、女優は生きがいと言っていたすーちゃんは、まだまだやりたいことがたくさんあっただろうに。
 「がん」が憎い。早期発見と医療の進歩を願わないではいられない。
 ご冥福を祈ります。

臨床瑣談

臨床瑣談


 親類縁者にガンをわずらうものが増え、私も数年前乳がんと誤診されたことがあった。誤診であることが決定する前、国立がんセンターセカンドオピニオンを求め検診。そこで誤診がわかった。
 そんな体験を思い出しながら『臨床瑣談 』(りんしょうさだん)中井久夫著(みすず書房)を読了。
「〈臨床瑣談〉とは、臨床経験で味わったちょっとした物語というほどの意味である。今のところ、主に精神科以外のことを書こうとしている」とある。
著者である中井久夫はすでに高名が轟く日本を代表とする精神科医であり統合失調症の治療に業績をのこした医者である。またウイルスの研究者でもあった履歴を持ち、漢方研究者でもあり、文学者でもあり、自らも前立腺がんを患い、丸山ワクチンを接種している体験を持つのである。
「これだけは伝えておきたい」という姿勢で書かれている。「現代は容赦なく病名を告知する時代である。告知の時代には、告知しただけの医師の覚悟も必要であり、また、告知された患者も茫然たる傍観者ではなく、積極的に何かを行ないたいだろう。患者もその家族、知己も、いつまでも手をつくねてドアの外で待つだけの存在では済むまい」と述べるのである。
院内感染を防ぐには患者側はどうすればよいか。脳梗塞の昏睡患者を前にして家族にできることとは。さらにガンを持つ人の日々の過ごし方について、「丸山ワクチン」について――。その実用的な助言、自然回復力の大切さと有限性も視野に入れながら、医学の可能性と限界をくっきりと映しだしている。
今や昔のように言われている丸山ワクチン
しかし、大学病院の医学部の教授がガンになるとすぐ助教授が丸山ワクチンを取り寄せるために奔走する例を多数みるという。
また著者自身も丸山ワクチンを含めてウイルスの研究者でもあったことや、自ら十数年前に自分に実験し、今また前立腺がん手術後ワクチンを使用していることなどの事例を含めたことなどが書かれていて参考になる。
・院内感染に対する患者自衛策試案、
・ガンを持つ友人、知人への私的助言
丸山ワクチンについての私見
・軽症ウイルス性脳炎について
 などが事例や私見を加えた事柄を分かりやすくかかれている。
患者も茫然たる傍観者ではなく、積極的に何かを行ないたいだろう。患者もその家族、知己も、いつまでも手をつくねてドアの外で待つだけの存在では済むまい
という言葉は示唆に富んでいる。
作家でロシア語通訳、翻訳者であった米原万理さんもガンと闘った人である。その著書『打ちのめされるようなすごい本』(文藝春秋社)ではガンに関するあらゆる本に目を通しインターネットで調べまくる様子が書かれていて中井久夫が言うところの「いつまでも手をつくねてドアの外で待つだけの存在では済むまい」をおもわせる。
今やガンに関してさまざまな書籍が刊行されていて米原万理さんの著書にもあるように正規の医療に対して代替医療と呼ばれる商品の多さと人の弱みに付け込んだ犯罪的な値段の高さには、はらわたが煮えくり返るのは誰もが感じることである。
医療に携わる者のもっとも大切なことは「病気を治すこと」であり、もうけることではないはず。
中井久夫の著書にもそうした現代医療への批判にも一脈通じているものがあった。