飛翔

日々の随想です

『タゴール著作集』と『支那童話集』

古書店での釣果。
支那童話集』 佐藤春夫著 日本児童文庫
装丁・恩地孝四郎 口絵挿絵・島田訥朗


※「賜天覧、台覧」と最初の頁に印刷されていて、天皇陛下皇后陛下にご覧頂きましたという事で非売品と奥付けにはありました。

 本書は中国の昔の本『東周列国志』『聊斎志異』『今古奇観』『太平廣記』から材料をとったもので、著者である佐藤春夫の「はしがき」によれば、
「別に童話といふのではありませんが、少年少女たちが読んでよかろうと思ふものを集めてみたのです」とある。
全部で十六篇の物語となっており、初めてよむのにどこか懐かしく、胸がときめくような面白さと美しさに満ちた物語たちである。
「美しい絹を織る妻」は「夕鶴」のお話にも似ているけれど、夕鶴のような悲しさがなく、天女が親孝行の主人公のために目も妖な絹を織って報いるという終焉が詩のようで佐藤春夫の文がきらめく。十六篇の中でも長いお話「百花村物語」は口絵挿絵にもなっていて、島田訥朗の絵が夢の中を遊ぶよう。

 一方、『タゴール著作集』箱つきもゲット。しかも、本の表紙にタゴールの直筆サインを上から転写したものがかかれてある。

わかりづらいけれど表紙にタゴールの直筆サインを上から転写したものがかかれてある。


ベンガル語本からの散文訳、英語本からの散文訳もついていてこれはもう二度と手に入れることができないものだろう。アポロン社発行。昭和三十六年十二月五日初版本である!美装、美本である。訳は渡辺照宏訳の名訳。
古びてはいるけれどほとんど読まれたあとかたがなく美しい本だった。
手袋をして読みたいような気持ちになる。