2010-01-10 君以外だれも容れずにぴんと鳴る 詩歌に寄せるエッセイ 意識したわけではないけれど夫と歩くときは夫の右側を歩く。それは初めてのデートの日から今までずっと変わらない。 どこへ行くのでも一緒のことが多いのでたまにいないと左側が寒いのに気がつく。つまり左側にいつもいるべき人がいないと何か忘れ物でもしたような、そこにあるべきものが抜けてしまってそこだけ空気が寒いのだ。 そんな歌にめぐりあった。君以外だれも容れずにぴんと鳴る弓弦のごときわれの右側 (松本典子(かりん)『いびつな果実』角川書店)