飛翔

日々の随想です

ラファエル前派

ダンテ・ガブリエル・ロゼッテイは人ぞ知る近代英国の詩壇の雄にして画壇の寵児であった。その妹のクリステイーナ・ロゼッテイは兄が描く「処女マリヤ」モデルとしてその姿を彷彿とできる。

彼女の美しい詩はいかに賞せられるであろうか?
北原白秋に登場願おうか。

・クリステイーナ・ロゼッテイが頭巾かぶせまし 秋のはじめの母の横顔(北原白秋

白秋の前に言葉なく、白秋の後ろに言葉なし。
ダンテ・ガブリエル・ロゼッテイの絵を鑑賞し、その後クリステイーナ・ロゼッテイの清らなる詩を読んでみよう。
せせらぎに湧く清らかな水のごとし。

砂浜と悲しみと(童謡)

砂浜と悲しみと どっちが重い
あすの日ときょうの日と どっちが短い
春の花と若さとは どっちが儚い
大海と真理とは どっちが深い

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さて次にガブリエル・ロゼッテイとその周辺、ラファエル前派について書いてみたい。
Dante Gabriel Rossetti(1828〜1882)はロイヤル・アカデミー時代にラファエル前派を結成した。多くの女性との恋愛から霊感を得て「詩集」を出し、絵を描いた。
クリステイーナ・ロゼッテイは妹である。
白秋の唄にある絵は「聖母マリアの少女時代」ではないだろうか。
また「受胎告知(われは主のはしためなり)」(テート・ギャラリー)のマリアのモデルも妹クリステイーナ・ロゼッテイである。
ガブリエル・ロゼッテイはウイリアム・モリス夫人ジェーンに恋をして、ガブリエル・ロゼッテイとは三角関係にあった。
こともあろうか、モリスは尊敬するガブリエルに自分の別荘に二人を同棲させた。
「不倫」は芸術???!
しかし、狂気か天才かは知らねども、ロセッテイはこういう。
「もっとも気高い絵は、描かれた詩である」と。そしてファム・ファタル(運命の女」)とも言うべき女性を次々と描いていった。
ロセッテイの描くところのファム・ファタル(運命の女」とは趣をことにしたのがミレイだ。
繊細で美しく色彩豊かで詩のごとき絵はミレイ描くところの有名な「オフィーリア」であろう。
シェイクスピアの「ハムレット」から題材をとった川面に浮かぶ「オフィーリア」。
一度みたら生涯わすれられない絵である。。
この絵のモデルは誰あろう後にロセッテイの最初の妻となったエリザベス(リジー)。
この「オフィーリア」を描いたのはミレイがはじめてであったけれど、その後ドラクロワや私が大好きなアーサー・ヒューズなどが次々と描くようになった。
さてここでいよいよ大好きなアーサー・ヒューズの登場である。
どんな絵を描くのか?それは、こんな絵である。↓

以前ここの日記で載せたカードである。
R教授にもらったカード。
その題も忘れられないものである。「4月の恋」(1855=56)油彩ロンドン・テート・ギャラリー
フェルメールの青も美しいけれど、このアーサー・ヒューズが描く女性の青紫の服の色は印象的である。
この絵は何回もロンドンまで行ってみてきたれど最初気づかなかったものがあった。
それはこの絵がなぜ「4月の恋」という題なのか。そのなぞはこの女性の右奥に潜むものである。
右奥に顔をふせた男のシルエットがあることに気づくだろうか?
彼は娘の手をとってキスしているのである。困惑した娘。
英国の「4月」の天気は変わりやすい。恋心もそのようなものか???
「4月の恋」
何回見ても美しい。
そしてこれをテート・ギャラリーまで行って買い求め、手渡したRの心中は何だったのだろうか?
このカードはカズオ・イシグロの本の中にすべりこむように忍ばせてあった。

さてさて、脱線したけれど、この絵はいったい誰の所有だろうか?
それは当時学生だったウイリアム・モリスが購入したものだった。
そしてまだおまけの話があるのだ。
当初この絵は批評家ジョン・ラスキンがほしがっていたものだった。
そしてこのラスキンの10歳年下の美しい妻は後に画家ミレイと恋に落ちてついに裁判沙汰でミレイの妻となったのであった。
さてもさても「ラファエル前派」を語ると長い話になる。
話ばかりでなく、私は今も「ラファエル前派」に夢中なのである。
壁紙はウイリアム・モリス。マグカップの絵柄もモリス。ソファーカバーもモリス。
長い話になったものであ〜〜〜〜る。
おわり。