飛翔

日々の随想です

「そして父になる」

 
  世界3大映画祭の1つ、フランスのカンヌ映画祭でことし審査員賞を受賞した是枝裕和監督の映画「そして父になる」の日本での上映が24日から始まり、先行上映を最寄りの映画館で鑑賞してきました。
 是枝裕和監督が福山雅治を主演に迎え、息子が出生時に病院で取り違えられた別の子どもだったことを知らされた父親が抱く苦悩や葛藤を描いたドラマです。
 大手建設会社に勤務し、都心の高級マンションで妻と息子と暮らす野々宮良多は、人生の勝ち組で誰もがうらやむエリート街道を歩んできた。そんなある日、病院からの電話で、6歳になる息子が出生時に取り違えられた他人の子どもだと判明する。妻のみどりや取り違えの起こった相手方の斎木夫妻は、それぞれ育てた子どもを手放すことに苦しむが、どうせなら早い方がいいという良多の意見で、互いの子どもを“交換”することになるが……。2013年・第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、審査員賞を受賞した。良多を演じる福山は自身初の父親役。妻みどりに尾野真千子、斎木夫妻にリリー・フランキー真木よう子が扮する。
「赤ちゃん取り違い事件」をテーマにした「血」とは?家族とは?親子とは?
 エリートサラリーマン役の福山と、町の小さな電気店を営むリリー・フランキーが好対照の父親像を絶妙に演じていて面白かった。それぞれまったく違う環境の子供。エリート家庭の子供はそれらしく育ち、町の電気屋の子供は子供らしく野放図な感じが自然で観ているものを引き込んだ。

 血は水よりも濃いのか?産みの親より育ての親なのか?
 6年間も自分の子供と信じて愛情を傾けて育てた子供が、よその子だったと知ったとたんに、愛情が冷めるわけはない。
 断腸の思いで「交換」した結果はどうか?交換された子供の想いは?親の想いは?自分ならどうだろう?
 と感情移入しながら見ているうちに最後は涙がとまらなくなった。

 リリー・フランキーが庶民の親父さんの味をだしていて、したたかさも持ちながら、子供の視線で遊び興じる親しみやすさを好演。福山雅治は初めての父親役だそうだけれど、エリート臭い「パパ」から次第に底を流れる幼児期の傷を見せはじめる頃から、じわじわと「父」になっていく感情のひだをうまく演じていた。
 
 母が子供に感じる心と男親が子供に抱く感情の差も見所。
 育てた子供に対する愛情が断ち難いのに、一緒に生活するうち、「交換」した実の子に愛情が芽生えたことで、育てた子供に「申し訳ない」と思う母の心が胸を打つ。
 
 子供って、親って、血って、何だろう?
 見終わってそれぞれに考えるテーマを残す映画だった。