飛翔

日々の随想です

ロゼワインの澄む夜

 

 人生で誰と食卓を共にするか。
 それは愛するものと笑いながら食卓をかこむほど楽しくおいしいものはないだろう。
 家族の他にというなら、男と女というくくりかたがある。
 まるでフランス映画でもみるような歌を歌う歌人がいる。
 松平盟子がその人である。

 
・えび料理にすこし手間取りそのあいだ男への応え引きのばしおり
・言いかけし皮肉の小骨のみくだす可愛がられていたいこの夜を
ロゼワイン心澄む夜をそそがれて馥郁(ふくいく)とせる時間(とき)が満ちたり

([ミッドナイトコール」『たまゆら草紙』)

 まるでカシニョールの絵の中の女性のようにけだるい退廃が漂ってくる。そんな夜は美食のテーブルでなくてはならない。
 勿論元気いっぱいなどとは極北の人である。
ああ、私も一度でよいからそんなアンニュイな香りが漂う低血圧の女になりたい。