飛翔

日々の随想です

名窓浄机の人

勉強するにせよ、仕事するにせよ、机の周りや部屋をきちんと整理整頓してからと云う人。その反対に机の上は本や書類の山、部屋は乱雑な中でないと落ち着かないというタイプがあるようだ。
私はどうも乱雑で大雑把なほうである。書籍の山からお目当ての本を一発で探し出す特技をもっている。下手に片づけられるともうどこに何があるか分からなくなる。
では作家の人たちはどうだろう?
山口瞳の著書『還暦老人 極楽蜻蛉』(新潮社)の中にこんなエピソードがある。

還暦老人極楽蜻蛉 (男性自身シリーズ)
山口 瞳
新潮社
永井龍男さんは僕が人生の師としていた方である。同じ東京育ちで、編集者から私小説を書くようになった経歴もほぼ同じで、気質的にも似たところが多いとおもっていた。(略)
永井さんは名窓浄机の人である。坂口安吾のように資料や芥塵(ごみ)の山のなかで原稿を書く人と机の上や身の廻りを掃除してから仕事にかかる人とがいる。僕はどちらかといえば後者に属する。その話を横山隆一さんにしたら「きみ、駄目だよ。永井はね、押入れのなかを雑巾がけしてから仕事をするんだからね
といわれてしまった。

とある。上には上がいるもんですねえ。