生死の境をくぐるような大病をすると、いつのまにやら身辺の整理をしようとおもうらしい。
私もそのうちの一人だ。
今まで捨てられなかった衣類や手紙や写真を思い切って処分した。
人付き合いも我慢してまで付き合うことはないと、義理ばかりで付き合ってきた人とは自然に離れていくことにした。
人のなりふりのあれやこれやを肴(さかな)にするような会話にはいっさいかかわらない。
何も欲しない無欲である。
ただそこに佇むだけの自然へと傾倒していく。
ライフ・ストーリー
一羽でも宇宙を満たす鳥の声
二羽でも宇宙に充満する鳥の静寂
(大岡 信『草府にて』(思潮社)から)