辻井伸行さん、二十歳が2009年17日間にもわたって競うヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで第一位の金メダルを受賞した。輝かしいばかりの栄冠である。
さかのぼること2005年の秋に行われたショパンコンクールではこのコンクールで最年少の17歳でのぞんだ。第二次予選まで勝ち抜いたが惜しくも本選に向かうことは出来なかった。しかし、「批評家賞」が贈られたことは記憶に残る。
今から60年前、同じショパンコンクールで、弱冠18歳だったポリー二が優勝した。
その時、審査委員長だったルービンシュタインは「技巧的には我々審査員の誰よりもうまい」と彼を絶賛した。
今日はポリーニが優勝した翌月ロンドンで録音したディスクと辻井君の17歳でショパンコンクールに挑んだライブ盤とを聞き比べることにした。
Piano Concerto 1 / NocturnesPhilharmonia OrchestraAngel Recordsこのアイテムの詳細を見る
ショパン・コンクール 2005~ショパン作品集辻井伸行ビクターエンタテインメントこのアイテムの詳細を見る |
ポリーニがショパンコンクールに優勝したのは18歳の時だった。辻井君は17歳。
辻井君のショパンコンクールライブ盤ではほんのわずかのきずはあるが、澄み切った音色は神がおりたったようでさえある。
一方、ポリーニの録音版は優勝した次の月に録音したもの。ピアノコンチェルト第一番の指揮はパウル・クレツキである。管弦楽はフィルハモニア管弦楽団。
このコンチェルトは独奏者の方に比重がかかっている。指揮者には大きな配慮と愛情が要求される。18歳で完全無比なポリーニのピアノテクニックは驚くべきものがある。神業であるが、力みのない抑制された表現にも驚く。
ポリーニはショパンコンクールの後はステージから姿を消してしまった。8年間、研鑽をかさねていたのだ。
このCDはロンドンで録音されたデビュー盤である。パウル・クレツキ指揮のサポートが実に見事でこれは名盤といってよいだろう。