飛翔

日々の随想です

クリスマスの贈り物



クリスマスがもうじきやってきます。
家族や愛する人に贈り物をします。
子供の頃は本やお人形がクリスマスプレゼントでした。

大学生になってボーイフレンドができ、初めてのクリスマスにもらったのが彼の手作りのクリスマスカードでした。
自分で描いた絵が立体像になって飛び出してくる愉快なクリスマスカードでした。手描き手作りの味がなんとも温かくてほのぼのと心を打ちました。
書いてあった字が大きくて茫洋とした人柄を表していて気に入りました。
大學の友人はみなそれぞれブランド物のスカーフとかジュエリーをもらっていましたが、私はちっともうらやましくありませんでした。学生は学生らしく身の丈にあったことをするのが好もしいです。
私はといえば、彼の貧乏下宿生活が少しでも温かいものになるようにフェルトで手作りしたスリッパを贈りました。スリッパの甲にイニシャルを刺繍して随分乙女チックなことをしたものです。
「ただいま〜ぁ」と誰もいない寒い下宿の部屋に帰ると私が作ったフェルトのスリッパがお出迎え!
若く貧しい二人でした。
きゃ”!おのろけかい?といわれそうですが、これは次の文章のためのイントロだとご理解ください。

クリスマスの贈り物といえば有名なオー・ヘンリーの短編「賢者の贈り物」です。
ある都会の片隅に、ジェイムズ・デリンガム・ヤングという若い夫妻が住んでいました。
 彼らの生活はつつましく、貧しかったけれど、二人は愛情にあふれていました。
 さて、明日はクリスマスです。
 ここ数日間、彼女は愛する夫のために何を買おうかとわくわくしていました。何か立派で珍しくて値打ちのある物、夫のジムが持って誇りに思える物・・・。
 しかし、若いデリンガム夫人デラには、夫のプレゼントを買うためのお金がたった1ドル87セントしかありませんでした。

 デラにはきらきら輝く美しい髪がありました。彼女はそれを売ってお金を作ることにしたのです。
 髪は20ドルで売ることができました。
 彼女は店店をまわってジムへの贈り物を見て歩きました。
 そしてある店でついに見つけたのです。
 それはプラチナでできたとても品の良い時計の鎖でした。
 夫のジムは祖父の代から受け継いだ立派な金時計を持っていました。しかし、それにつける鎖がなかったので、いつもこっそりと時計をみていたのでした。
 あの時計にこの鎖をつければ、ジムは誰の前でも気がねなしに時間を見れるだろう。
 彼女はその鎖を買うと、喜々として家に急ぎました。
 家で鏡の前に立ってみると、デラは自分の姿がひどい姿なのに気がつきました。短くなってしまった頭はもうどうしようもなく、まるで男生徒みたいでした。
「神様どうか、ジムが今でも私をきれいだと思わせて下さい。」
 とデラはお祈りをしました。

 その夜、ドアが開いて、ジムが家に帰ってきました。彼はやせていて、ひどくきまじめな顔をしていました。彼はまだ22才なのです。
 ジムはドアのところで、茫然と立ち止まりました。
 茫然として、ただ、妻をじっとみつめているばかりでした。
「ジム、そんなふうに私を見るのはやめて。私髪を切って売ったの。ね、かまわないでしょう?髪なんてすぐにまた伸びるわ。さあ、クリスマスおめでとう、といってちょうだい。私、ジムにすてきなプレゼントを買ったのよ。」
「髪を切っちゃった?」
「そう、髪を売っちゃったの。でも、髪が短いからって、今でも私を好きでしょう?」
「髪はもうないっていうんだね?」
 ジムはポケットから、包みをとりだして、テーブルの上に置きました。
 それは妻デラへのプレゼントでした。
 デラはそれを開けてみました。
 そこには、彼女が以前からあこがれていた、ブロードウエイの店の飾り窓にあった、宝石をちりばめた一対の髪飾りがありました。今、それが自分の物になったのです。しかし、その髪飾りをする長い髪はもうなかったのです。彼女はそれを胸にしっかりと抱きしめました。そして、涙であふれた目で微笑しながら、「ジム、私の髪は伸びるのが早いのよ。」といいました。
そして、飛び上がって叫びました。
「これがあなたへのプレゼントよ、ジム。」
 彼女は鈍く光る白金の時計鎖を手のひらにのせて差し出しました。
「すてきでしょう?ジム。わたし、これを探すために町中を歩き回ったのよ。これで、一日に百回でも時計が見られるわよ。さあ、あなたの時計を出してちょうだい。どんなにすてきか、見てみましょう。」
 ジムはソファーにごろっと横になると、両手を頭の下にまわして、微笑しました。
「デラ、もうクリスマスプレゼントはかたずけて、しばらくはしまっておこうよ。すぐに使うのはもったいないから。」
・・・・「ぼくは君の髪飾りを買うお金を作るために時計を売っちゃったんだ。」