飛翔

日々の随想です

雲の誕生

雲の誕生―有元利夫作品集

雲の誕生―有元利夫作品集


38歳という若さで世を去った画壇の寵児、有元利生。限定制作であったオリジナル銅版画集「NOTEBOOK](828385)「限定版 雲の誕生」の4冊より46点を収録したものが「雲の誕生」である。何の解説も、文もなく、ただそこには有元利生の美だけがおさめられている。
 まるで彼のクロッキー帳を繰るように鑑賞できる。しかもミシン目があるのでページごとに切りとって額装することができるしかけになっていて、それを発見して飛びあがって喜んだ私。
 絵画や彫刻に説明はいらない。ましてこの有元利生の画集は野暮な言葉など不必要であり、また、この画集は見事なくらい一切の説明、解説、作者略歴を載せていない。ただ一枚一枚のページを繰って鑑賞すればよい。
 この中の一枚を切りとって額装しようと思う。
 自分の部屋の壁にかけて日々味わいたい。きっと静謐な美がひたひたと部屋に満ちてくるに違いない。
 彼の妻である有元容子の回想と利生の15歳からの青春日記で編まれている「花降る日」も合わせて読んで見た。
 画家の素顔と孤独がにじみ出ていてこの回想と日記を読んだあと、再び利生の画集を繰ると味わいがまた深くなった。