飛翔

日々の随想です

「葵上・卒塔婆小町」

今年の目標は随筆を中心に読むことと、能舞台を初めとして歌舞伎、演劇といった舞台芸術をたくさん観ることをかかげている。いつもお世話になっている劇作家の先生の舞台を今のところは見てきたが、今日は三島由紀夫作 近代能楽集より「葵上・卒塔婆小町」美輪明宏主演を愛知県芸術劇場で観て来た。
 マチネ(3時開演)には大勢の観客で満員。さすがに華麗な舞台、演出があかぬけており、美輪明宏は「美しさ」を知り尽くしていた。
 玉三郎をはじめとして美輪明宏は「美」の探究者である。
 恋愛とと美と死は時代が変わろうとも普遍のもの。
 作者の三島由紀夫美輪明宏にとこの主役を依頼した肝いりの作だけに美輪自身の演出は奇をてらうことなく端麗で品格、見る人を別世界にいざなう魔力に富んでいた。
 「葵上」は舞台右にサルヴァトール・ダリの有名な溶けた「時計」が木にぶら下がっているかと思うと琳派尾形光琳や室町風をドッキングしたような美術となっていてこの舞台が音楽も、美術も、衣装も時間も空間も超越したものであることがわかる。
「葵上」:
 とある奇妙な病院の一室。深夜、美貌の青年・光(岩田知幸)は病に伏せる妻・葵を見舞う。看護婦に寄ると、葵は夜な夜な悪い夢を見てうなされるという。そこに、かつて光と恋仲だった六条康子(美輪明宏)が現われ、二人の愛を回想し、光を幻想の世界へといざなう。光が木を取り戻すと康子の姿が消えている。原典は『源氏物語』の葵の巻を元にした能。1954年に「新潮」に発表。
卒塔婆小町」:
 いくつものカップルが抱擁している夜の公園。一人の乞食老婆がタバコの吸殻を集めている。酔っ払った詩人が話しかけると、老婆は昔、自分は小町とよばれていたという。やがて、その公園は明治時代の鹿鳴館の庭へと変わり、詩人も八十年前に老婆のもとに百夜通いをしていた深草少将となって、老婆と百夜目の晩のワルツを踊るのだが・・・
 小野小町を題にとった能・謡曲を翻案。1952年に「群像」に発表した作品。

 ラストに踊るワルツは純白にビーズやスパンコールが施されたイヴニングドレスを着た美輪明宏が華麗に上半身を半身にそらせた美しい姿で舞い踊る。
 スポットライトに金や銀が降り散る中、美輪明宏が踊る姿が美しすぎるほど美しかった。
 演出・音楽・美術、構成、すべてが洗練されて美しかった。