飛翔

日々の随想です

読書の鎖鎌

井上ひさしの本を読んでからというもの、次々と彼の作品を読む毎日だ。そしてその中の一冊『わが蒸発始末記』(中公文庫)に「現在望み得る最上かつ最良の文章上達法とは}丸谷才一の『文章読本』を読め.とくに「第二章の名文を読め」を繰り返し読むがよろし]とあった。これでは申し訳ないと思ったのか井上ひさしは「血反吐を吐くほど読め」と付け加えることを忘れなかった。他人のふんどしで・・・と思うが、しかし、これにつきると思い、丸谷才一の『文書読本』(中公文庫)を買い、「血反吐を吐くほど」これを読んだ。そして次々とこれを読めという本をかたっぱしから読んでついに素晴らしい詩人にぶち当たった。それは多田智満子である。
 名前は聞き知っていたが、作品を一冊も読んだことがない。『長い川のある国』(多田智満子詩集)(書肆山田)、『十五歳の桃源郷』(人文書院)にいたって感動の涙を流し、鎖鎌で次々と刃をかけた釣果に目を見張った。そして多田智満子から鷲巣繁男を知り、稲垣足穂へと行き、マルグリット・ユルスナールの『ハドリアヌス帝の回想』紀行へと読書の鎖鎌は進んでいった。ブログを書く暇があったら「血反吐を吐くほど本を読め」の声がこだまする。確かに、読み進めるうち、知らなかった世界をかいま見、言葉の豊穣におぼれそうになる。人生は短く、読む本は多い。
 読書の鎖鎌はまだまだ続くのである。

文章読本 (中公文庫)

文章読本 (中公文庫)

十五歳の桃源郷

十五歳の桃源郷

ハドリアヌス帝の回想

ハドリアヌス帝の回想