飛翔

日々の随想です

新田次郎の文章指導

母への詫び状 - 新田次郎、藤原ていの娘に生まれて

母への詫び状 - 新田次郎、藤原ていの娘に生まれて

 父・新田次郎と母・藤原ていの娘・咲子が書いた「母への詫び状」の中で新田次郎が娘咲子に文章指導する箇所があります。
 子供の頃から娘咲子に文章指導をしていた新田次郎
 何かと娘に自信をもたせようと、ほめて指導する新田次郎には、溢れんばかりの娘への愛に満ちる父の姿がありました。
 その文章指導の言葉は一冊の文章指導教本よりもすごいもの。

 その部分を引いて見ましょう:

感動だけで書いてはダメ。感動から出発してそれを整理し、次に糸くずまで捨てるぐらいの気持ちで思い切り削る・・・。最後に、そのなかから絹糸一本だけを引き抜くのだよ。すると研ぎ澄まされた何かが見えてくる。何を書くのかが見えてくる・・・

どうでしょう!

「絹糸一本だけ引き抜く」とは!
直木賞を受賞した新田次郎は昼間は気象庁技官として、夜は月100枚の原稿を書く流行作家でした。
しかし、『「書けない、書けない」』と苦悶する姿もあったのでした。
その父が娘に授ける文章指導の言葉。

文を書く厳しさに打たれた言葉でした。