夫は職業柄、色彩やデザインにうるさい。
今日は久しぶりの休日だったので、散髪に出かけたいと言い出した。
すっかり着つぶしたモスグリーンのコーデユロィのシャツを着て、
「これでいい?」
と尋ねた。
「秋らしくシックでいいんじゃない」
と答えると満足した様子になったので、ちょっとジャブを一つ。
「誰もおじさんの服なんかに興味をもたないわよ」
と憎まれ口を叩くと、
「誰も見なくても、お洒落に気を使うのが紳士の嗜みだよ」
と偉そうに答えた。
「さすが、素敵!もとい。さすが素敵な妻の夫!」
と褒めたのかけなしたのかわからない言葉で送りだした。
鬼の居ぬ間にではないけれど、私は久しぶりにスポーツジムで汗を流すことにする。
帰宅すると、夫がパリのパン屋「ビゴの店」のバゲットとパウンドケーキを買って帰った。
明日のブランチは久しぶりにおいしいパンが食べられそうだ。
夫を散髪に出すときは褒めて出すに限る。