飛翔

日々の随想です

合格


今日は日曜日だけれど、登校日。
 蒸し暑い日曜日だ。始まる30分前についたので、近くの喫茶店でコーヒーを飲みながら教科書を読む。
 日曜日なので客もまばら。店の奥に陣取ってゆっくり熱いコーヒーを飲む。パリやウイーンのカフェでは客が思い思いの格好でくつろぎながら時が過ぎゆくのを楽しんでいる。新聞を読むもの、原稿を書く者、本を読むもの。道行く人を眺めながら会話を楽しむなど、カフェ文化のようなものが根付いている。
 せかせかと時に追われず、歴史の匂いを染み込ませたカフェの椅子に身を沈めるひと時。いく時代もの時を共有するような錯覚に陥る。
 ふと気がつくと授業が始まる時間が迫っていた。
 小走りに歩みを早めながら、教室のドアをあける。
 もうみんなの顔が揃っていた。日曜日のクラスに替えてもらったのは正解だった。のんびり、おっとりしたクラスの仲間のあいだに入っていると、ギスギスした感情が和らいでほっと人心地つける。
 先生との信頼関係(ラポール)も築けて自分が自分でいられる。
 授業が終わって難物だったビデオ撮りの結果発表である。ひとりひとり、個室で結果をもらい講評を聴く。
 意外や意外。合格点をもらった。
「予備審査の段階では合格点は出さないことにしているけれど、合格です」
 と言ってビデオによるカウンセリングの内容審査の詳しい指摘を受けた。
 9月末の本審査に向けてこれからが、本当の実力を問われる。もう7月も半ばになってしまった。あと二ヶ月、また勉強で苦しみそうだ。卒業するまでどこにも遊びに行けない。
 その年になって、なんでそんなに勉強するのだと夫に言われたが、
 「今やっと、学びたいものを見つけた」というのがその答えだ。
 知らないことが沢山有り、知りたいことがたくさんある。学べば学ぶほど、その思いが募る。
 「予備審査の段階では合格点は出さないことにしているけれど、合格です」
   先生の言葉に背中を押されて、明日への一歩を踏み出せそうだ。